ハムスター/うさぎ[症例]

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症例紹介~ハムスター、うさぎ編

ここでは、ハムスターとウサギの症例を紹介します。
小動物は、代謝が高いので病気の進行も早く、あっという間に状態を崩してしまいます。早期発見・早期治療につとめましょう。
ハムスターなどの小さい動物は麻酔をすると死んでしまうと誤解されている方も多いようですが、専門病院では全身麻酔下で腫瘍の摘出手術などを普通に行っています。

ジャンガリアンハムスターの内蔵型肥満細胞腫

ジャンガリアンハムスターの内蔵型肥満細胞腫

ジャンガリアンハムスター ブルーサファイア色 オス 1.5才
腹部が膨れている気がするとのことで来院。触診において左側腹部に勾玉上の大豆大の腫瘤が触知されたが盲腸の可能性もあったことからしばらく様子を見ることとした。下痢や便秘症状および一般状態には異常は見られなかった。
レントゲン撮影において何らかの腹腔内の腫瘤による消化管圧迫により、消化管の偏りが観察された。右側が頭、左がお尻側。写真の上側が偏在している消化管で黒くガスの溜まった状態が観察され、逆に下側は白く塊のようなものが認められる。
数日後、陰茎包皮に膿瘍が認められ、排膿および注射による抗生物質の投与を行い、治療をいた。
膿瘍治療中も一般状態に異常は見られないものの、なんとなく腹部の腫大が大きくなってきた気もするので、膿瘍の排膿処置のついでに全身麻酔したで試験的開腹手術を行いました。
下の左側の写真は腹部切開をして認められたやや桃色の乳白色の腫瘤群。下右側の写真はさらに腹腔内から腫瘤群をひっぱり出した状態。赤く長い臓器は脾臓で写真では分かりづらいが薄く白い部分が島のように散在している。これらの腫瘤群は脾臓の根元部分から腸管を取りまとめている大網という部分にブツブツと種をまいたように大小様々認められた。
この腫瘤は脾臓に転移している可能性も大いに考えられたため、脾臓を含めた腫瘤群の全摘出を行った。一部腸管および腹膜に転移巣が見られたが無理に摘出することはさけた。
術後の病理検査においてこの腫瘤群は「肥満細胞腫」であることが分かった。肥満細胞腫についてはフェレットの症例を参考にしてください。

ウサギの子宮腺癌

ウサギの子宮腺癌

ライオンラビット 5才 メス
腹部に腫れがあるとのことで来院。
腹部乳腺部に親指の第一関節くらいの腫れものが見られ、年齢から子宮疾患も併発している可能性があるため、レントゲン検査をすすめて撮影すると案の定、下腹部に子宮と思われる影が写りこんでいたため、乳腺の腫瘍との関連も考慮し、腫瘍および子宮摘出手術を行いました。
下左の写真は摘出した子宮。右の写真は避妊手術によって摘出した他のウサギの正常な子宮。比べてみると明らかにボコボコと腫大しているのが分かる。緑の→は卵巣。こちらは異常は認められない。
病理検査において乳腺の腫瘍は「乳腺上皮腫」、子宮の部分は「子宮腺癌」であった。

ゴールデンハムスターの肝嚢胞

ゴールデンハムスターの肝嚢胞

ゴールデンハムスター オス 3才
お腹が腫れてきたとのことで他院で診察を受け、超音波検査をしたものの、よく分からないとのことで当院を紹介され転院してまいりました。
レントゲン検査においても体腔内に水胞様の腫瘤物は触知できるものの断定はできなかったので試験的開腹によって可能であれば摘出する方針で開腹手術を行いました。
左の写真は手術前の毛を刈った状態。黒く透けて見える部分が嚢胞のあるところ。
二番目は開腹した状態。嚢胞はかなり大きく、このまま腹腔外に出すのはムリなので内部の水様物を注射器で抜いて大きさを縮め摘出した。この状態である程度赤黒い水様物を抜いた後。
嚢胞の起源をたどっていくと肝臓から大小の水胞が派出していた。色はどす黒い血様から無色透明と様々。三番目の写真の緑→は肝臓の実質。表面に小さな嚢胞がたくさん見られ、青→は成長したもの。右は摘出した大きな嚢胞。先に述べたように液体を吸引して縮小して摘出しているため本来はこの3倍程度の大きさだった。
病理検査は行っていないが、胆管由来の腫瘍ではないだろうか。

ジャンガリアンハムスターの粘液腫

ジャンガリアンハムスターの粘液腫

ジャンガリアンハムスター 1.5才 オス
2週間ほど前から足が腫れてきたとのことで来院。実はその時、2件の他院で診察を受け、内服薬を処方されていたが、効果がなく、さらに悪化してきたため来院された。
赤黒く腫れているのは、スネの部分で骨折の好発部位であるため下腿骨遠位端骨折や、骨肉腫を疑ったがレントゲン検査により否定されたため、炎症性もしくは他の腫瘍性疾患を疑い難治性と判断したため飼い主への説明後膝関節からの断脚手術を行った。
病理検査は飼い主の意向で行っていないが、腫瘤の切り口から粘液が浸出されてきたことから粘液腫ではないかと思われるが、正確には不明である。

ゴールデンハムスターの直腸脱

ゴールデンハムスターの直腸脱

いわゆる「ウェットテール」などの慢性の下痢と腸管運動の異常亢進により、腸重積となり反転した腸管が肛門より逸脱し、脱腸した状態となる。
病院に行く前に脱出した腸管が乾燥しないように応急処置としてサラダ油を塗布し、すぐ病院へ行くこと。時間をおくとハムスター自身が齧ったり、底面にこすったりすることで腸管が壊死を起こしてしまうので、注意します。病院で積極的に治療するのであれば、開腹手術により、おなかの中から腸管を元に戻さねばなりません。
上の写真は、反転して脱出した腸管。下は開腹手術により、腸管が重積(反転して二重になってしまった状態)しているのが確認できる。ピンセットの先端部分

ジャンガリアンハムスターの直腸脱

ジャンガリアンハムスターの直腸脱

以前はゴールデンハムスターのもの。今回はジャンガリアンです。いわゆる「ウェットテール」などの慢性の下痢により、腸管運動の異常亢進により、腸重積となり反転した腸管が肛門より逸脱し、脱腸した状態となる。
上の写真は、反転して脱出した腸管。下は開腹手術により、腸管が重積(反転して二重になってしまった状態)しているのが確認できる。緑↓は重積の末端部分。ここから腸管が内側に反転して内側に入り込んでしまっている。青↓は脱出してうっ血してしまった腸管。

ウサギの耳血腫

ウサギの耳血腫

生後1ヶ月のうさぎ。メス。
ペットショップでふと見ると耳が腫れていたので店長に言って治療しました。売り物なのであまり治療費かけるのもよろしくないので、とりあえず耳の血溜まりから注射器で応急処置したものの、案の定再び溜まりだしたので手術しました。
原因としては他のウサギに咬まれたり、外耳炎や耳カイセンダニなどにより、耳を掻きつづけることによって発症します。耳は軟骨の上に皮膚が乗っているだけなので一度内部で出血が起こると際限なく腫れてしまうので注意が必要です。タレ耳の犬が外耳炎になるとしばしば見られる症状です。
手術後しばらく入院していましたが、全然溜まらなくなったので退院させようとペットショップに持って行って「情が移らないうちに返す」と店長に言ったら、「全然情が移って構わないですよ。先生よろしかったらあげます。」って言われてしまいました。もともと「こいつかわいいなぁ」と思っていたら耳の異常見つけてしまったので、運命の出会いかもしれないのでもらって来ちゃいました。
内容が「雑記」になってしまいました。すみません。

ジャンガリアンハムスターの耳道膿瘍

ジャンガリアンハムスターの耳道膿瘍

2才のジャンガリアンハムスターのブルーサファイア。メス。
耳の下が腫れているとのことで来院。
多くの場合、外耳炎から波及したもので、外耳道の腫瘍(乳頭腫という良性腫瘍のことが多い)が、耳道を封鎖することにより膿が排泄されず耳の奥に溜まることにより大きく腫大する。
即日、排膿造孔手術を行った。このように耳の奥に貯留した膿は空気の嫌いな細菌によることが多いので、排膿後縫い合わせをせず、あえて孔を強制的に作ることによって空気にさらし、消毒液による洗浄・治療をしやすいようにしておきます。下の写真は切開して排膿しているところ。
ジャンガリアンでは特によく見られる病気なので注意が必要です。経験的にパールホワイトに多い気がします。

ウサギの子宮腺癌

ウサギの子宮腺癌

5才のネザーランド種。メス
3日前から血尿があり、食欲、飲水が減っているとのことで来院。
レントゲンを撮ってみると下腹部に子宮と思われる箇所に不正形な塊が見られた。(写真左↑の部)
試験的開腹という前提で開腹手術を行ったところ子宮の部分に内出血を伴った腫瘤塊が子宮の部分全体に形成されていたため、即摘出手術となった。
写真右は摘出した卵巣および子宮。↓↓の部分が腫瘤の部分。病理検査は行っていないが、子宮腺癌と思われる。術後尿自体は血液の混入は認められず、子宮の腫瘍部分から出血していたものが、排尿時もしくは力んだことにより、血尿の状態になったものであった。
リニューアル中に画像消滅しました。探します。すみません。

ウサギの不正咬合

ウサギの不正咬合

3才のロップイヤー。
上下の切歯(前歯)の咬み合わせが悪いため、過長してしまったもの。左の上切歯は下顎に突き刺さっていた。右の写真の下切歯の先にある赤黒い部分はその突き刺さっていた場所。
幸い奥歯(臼歯)の過長は認められなかった。

ウサギの子宮水腫

ウサギの子宮水腫

2才4ヶ月のメスのウサギ
口の下(顎)が濡れているとのことで来院した。この症状は歯の不正咬合、今の時期なら熱射病というのが大体相場なのだが、?!?!?!
食欲はあるのにその異様な痩せ方と、その割りに異常に垂れ下がったお腹をしていた。以前からこんな感じだったとのことであったが、以前見ていただいた病院では何も言われなかったとのこと。触診をしてみると腹部に明らかな水膨れがある。一応レントゲンを撮ってみると案の定下腹部に白くボーとした水の溜まった像になっていた(写真左 左側が頭部 右がお尻側)そう子宮水腫。歯の方も臼歯(奥歯)の不正咬合から根尖炎になって今回のヨダレという症状になっていたようですが、子宮の方が重症なので麻酔下で開腹手術および歯の治療ということになりました。
飼い主に状況を説明し、緊急OPEということになりました。元気はあったが、かなり痩せていたので大事をとって点滴をしながら開腹手術。卵巣子宮全摘出手術を行いました。普通の子宮が鉛筆ほどの太さなのを考えるとこの子宮の異常さが分かると思います。(写真右)
重量にして500のペットボトルが入っていた計算になる量がお腹にずっと入っていたものですから、術後は今までじっとしていることが多かったウサギさんだそうですが、すっかり身軽になったようで、家の中を元気に跳び回るようになったとのことでした。

ゴールデンハムスターの腹腔内腫瘍による腸管癒着

ゴールデンハムスターの腹腔内腫瘍による腸管癒着

4ヶ月位のゴールデンハムスター メス
4、5日前に他院にて上診。よく分からないとのことで帰されたので、当院に来院。右側の腹腔内にソラマメ大の腫瘤が確認された。陰部からの出血やおりものの排泄は認められないが、乳腺がやや発赤していた。年齢的に卵巣子宮系の病気や、腎腫瘍などは発症しにくいと考えられるが、試験的開腹のもと可能であれば摘出との方針で開腹手術に踏み切った。
腹膜を切開するとやや腹水が貯留しており、腸管には小豆大の淡赤色の腫瘤があり(上の写真の右上、右の金属器具の先)、右脇腹の腫瘤は腎もしくは卵巣の腫瘍により腸管と癒着したもの(下写真の左端の赤黒い部分。上方は頭の方向)であった。
腸管が癒着して絡んでいる以上摘出不可能なのでやもうえず摘出は断念した。

ウサギの神経鞘細胞腫

ウサギの神経鞘細胞腫

ウサギの頬から鼻にかけて大きなコブができたということで他院にて上診されていたウサギ。薬を処方されていたが、どんどん大きくなってきたので当院に来院された個体。(右の写真)大きさは「テニスボール」大
早速摘出手術となったが、頬の部分は筋肉には浸潤しておらず摘出可能であったが、鼻の穴の周囲にも広がっていたので鼻までは摘出できなかった。右の写真は摘出した腫瘍。
病理検査によって「神経鞘細胞腫」という診断であった。これは悪性の腫瘍で再発の可能性が高い。

ジャンガリアンハムスターの頬袋脱

ジャンガリアンハムスターの頬袋脱

ハムスターでは比較的多い疾患で、頬袋のキズが原因でリンパ液が貯留し脱出する病態である。クッキーやパン、ご飯など水気を含むとぐちゃぐちゃになるようなものを与えるとなることが多い。簡単に考えると水ぶくれになった頬袋に針を刺して抜けばよいように思いがちだが、多くの場合うまく行かないことが多い。ハリで穿刺後、高濃度の糖液などで浸透圧で脱水し、縮小させてから陥納させることもあるが、時に再発する。
また、腫れている状態で口の中に戻してもすぐに再発するため摘出してしまうのが良い。
そのまま放置しておくとハムスターが自ら咬み壊して無残なことになる。

ハムスターの咬傷

ハムスターの咬傷

ハムスターの複数同居飼育により、他のハムスターに咬まれたもの。目の横や腹部も咬まれているが、手の甲が炎症により腫大したもの。(写真左)
手の甲(というより手の先全体)がバイ菌が入ったことにより炎症を起こし、膿んでしまったもの。抗生物質と消炎剤を注射しながら、膿の塊が熟成してきたので麻酔下で排膿した。(写真右の白い丸い塊が膿)

ジャンガリアンハムスターの線維肉腫

ジャンガリアンハムスターの線維肉腫

ジャンガリアンには、大変多い腫瘍。(左の写真)
大きさは小豆くらいの大きさ。(ピンセットの先)
麻酔をかけた後、摘出。右手の上にある白いかたまりが摘出した腫瘍。(右の写真)
縫合して終了。
細胞診の結果「線維肉腫」であることが分かった。

ウサギの斜頚

ウサギの斜頚

脳に細菌やエンセファリトゾーンという寄生虫が入ってしまうことで平行感覚に異常をきたし、頭が傾いてしまった状態。
細菌性のものでは、スナッフル(くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど)や足底の化膿巣が慢性化すると起こることがあります。
エンセファリトゾーンの寄生では、他の病気により免疫力の低下によって日和見的に発症してしまいます。
以前は診断不能だとか、完治不良と言われていましたが、現在では血液検査によるエンセファリトゾーン抗体の測定が可能になりましたのでこのような症状が現れた場合、できるだけ早く、なるべく24時間以内に適切な処置を行わないと回復に影響がでます。初期症状としては目がキョロキョロする眼振症状が見られることが多いようです。
抗体検査により、寄生虫の感染が示唆された場合は専用の薬を与え、寄生虫の封じ込めの治療を行います。