鳥類/その他小動物2[症例]

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症例紹介~鳥類、その他小動物編

ここでは、セキセイインコや文鳥、オカメインコなどの鳥類とハムスター、ウサギ、フェレット以外のエキゾチック動物を中心に症例を紹介いたします。
旧ホームページからの移行過程で写真の紛失や、設定ミスで実際のものと異なることもあるかもしれませんが、適宜修正いたしますのでご了承ください。

ヨウムのアスペルギルス症

ヨウムのアスペルギルス症

5日前にペットショップにて購入した若いヨウム。
足輪が付いている足をかばって歩き、あまり食べないとのことで来院。
下腿骨端の肥厚がみられたが、消炎剤などの注射にて腫れも引きかばうのも軽減されて、前夜はよく食べたとのことであったが、翌朝は食欲がなくなり、嘔吐がみられ、頭を前に伸ばした体勢で元気がないとのことであった。診察中に排泄した尿と糞には少量の鮮血が混じっていた。レントゲン撮影ではそ嚢と腺胃(消化液を分泌する胃)および筋胃(エサを磨り潰すための胃)にガスの貯留が認められた。
飼い主の話では、淡緑色の嘔吐物であったため、同色のペレットを詰まらせたかもしれないとのことで、バリウム造影による閉塞の確認を行ったが、1時間半後ようやく少量のバリウム液が腺胃に落下しているような状態で何らかの通過障害があるように感じられたが、確定には至らなかった。
さらに翌朝治療の甲斐なく、亡くなってしまいましたが、飼い主の御好意により解剖をさせていただくこととなった。
症状やバリウム検査から疑われた閉塞や狭窄は食道-そ嚢-腺胃-筋胃とも認められず、腺胃の壁が薄くなっているのが認められたのみで肉眼上の消化管内の病変や異物は確認できませんでした。糞便検査においても検出されましたが、腺胃粘膜からも少量のメガバクテリアが認められた。
解剖を進めていくと右の肺から胸部気のうの接する部分にカビが広範囲に生えているのが認められた。(写真の→部分)形状からアスペルギルス症であると断定しました。
アスペルギルスは、自然界に普通にみられるカビでパンなどに生えるものと同じようなもので感染の要因としては、飼育施設内に発生したカビを吸気することにより感染するのですが、少量であれば免疫系が正常であれば感染する可能性は高くはないが、高濃度に暴露されたり、環境の不備や急変により、ストレスが加わって抵抗力が低下することで感染する可能性が高くなります。特に幼弱個体や老齢個体、他の病気に併発する可能性が高くなるので注意が必要です。
検査においては、一般的には気管洗浄液からの真菌胞子の検出や内視鏡による診断となりますが、実際はかなり困難で剖検時の気管洗浄においても真菌胞子の検出はできませんでした。また、嘔吐や食欲不振、次第に痩せてくるなどの病鳥症候群を呈するだけで特徴的な症状ではないため実際の生前診断は難しいと言わざるを得ません。

セキセイインコの精巣腫瘍

セキセイインコの精巣腫瘍

4歳のセキセイインコ オス。
腹部が膨れているとのことで来院。膨羽(羽を膨らませる)、呼吸速拍がみられ、尾を上下に動かし呼吸困難症状、気嚢雑音およびろう膜の褐色化が認められた。腹腔内は液体の貯留が認められ、これらの症状から精巣腫瘍を疑い、対症療法として腹水を抜き取る処置を行った。
腹水の貯留速度は早く、2日後には溜まってしまう状態が続いていた。腹水は黄褐色で透明感があり、炎症性のものではないようだった。
写真はお腹を開けたもの。右側の白い塊が腫瘍化した精巣。
っと以前のホームページに載せていましたが、リニューアル時に写真を紛失してしまったので同様の症例の写真を掲載しておきます。
今回の上の写真で中央のやや桃色の白い塊が腫瘍化して肥大した清掃。下は死後に摘出したもの。摘出してみると頭より大きいことがわかる。

シマリスの動脈硬化

シマリスの動脈硬化

シマリス。
初診時に呼吸が粗い症状が認められてたため、レントゲン検査を進めて撮影を行った。
まず、呼吸の粗いのは肺に水が溜まったことにより、呼吸が抑制されていた状態であったためで、その原因と思われる心臓の肥大と心臓から突出している大動脈と基部に白い石灰沈着像が認められる。(写真下:の左側が頭部で黒↑の先が心臓の部分)
上の写真では頭部側の上の↓には背骨のブリッジ形成像と尾側の↓の部分には脊椎の下に白い点線状に大動脈の壁面に石灰沈着像が認められた。

ハリネズミの眼球損傷

ハリネズミの眼球損傷

原因は必ずしもはっきりしないが、前日目から血が出ていたとのことで来院した。ハリネズミは警戒するとすぐに丸まってしまうので、麻酔下で眼球を精査するとすでに角膜は欠損しており目が潰れた状態になっていた(写真上)ことからそのまま眼球摘出手術となった。下の写真は眼球摘出後の様子。
ハリネズミは、思いの他視覚に頼った生活をしていないことから片目を失っても生活に支障はみられないと思われる。

リチャードソンジリスの腺癌

リチャードソンジリスの腺癌

4才のリチャードソンジリス。メス
以前口の下に腫瘍ができて摘出したが、数ヶ月後頚部に腫瘍ができた。病理診断では「腺癌」であったが、肉眼上完全摘出されていたものであったが、今回は、左頬袋に隣接して形成されていた。この後、1月後に同じ場所に再発。三度の摘出手術を行っているが、大変やっかいな腫瘍である。

キタリスの膀胱結石

キタリスの膀胱結石

キタリス オス
慢性の膀胱炎から血尿を繰り返していた個体。慢性膀胱炎から膀胱結石が形成され、結石が尿管内に梗塞して尿閉になってしまったもの。(写真左のレントゲン写真 金属棒の先端の白い結石に注目)
尿が出ないことにより、膀胱破裂となってしまったので緊急手術となった。右の写真は、腹部を切開した状態で、赤黒い塊が慢性膀胱炎により壊死脆弱化してしまった膀胱粘膜。通常は透明の水風船様。

ジュウシマツの肝腫大

ジュウシマツの肝腫大

年齢不明だが、わりと老齢だと思われるジュウシマツ。
2ヶ月ほど前から時に膨羽(羽を膨らませる)がみられ、尾羽や頚部の羽が抜けはじめたのは数ヶ月前だという。
左の写真は腹部のもので、赤黒いものが腫大した肝臓。通常では外見上確認できる肝臓は1mmていど。
右の写真は肝疾患時に典型的な糞便の様子。フンのまわりに、にじむ水分が黄色くなっているのがわかる。

セキセイインコのカイセン症

セキセイインコのカイセン症

トリヒゼンダニというダニが嘴などに寄生して嘴やろう膜などにトンネルを掘って瘡蓋(かさぶた)のようなものができる病気で、伝染力が強いため同居鳥に次々とうつっていきます。この病気自体で死ぬことはまれですが、嘴の変形で餌が食べにくくなったり、細菌の二次感染により重篤な病気になってしまうこともまれにあります。
治らない病気ではありませんが、薬がダニの卵には効かないため、数回の殺ダニ剤の塗布が必要となります。
好発部位は、嘴、ろう膜、足のウロコ部分などのやや硬い部分と肛門周囲、尾腺の周囲、目の周囲など粘膜と皮膚の移行部分に灰色の瘡蓋のようなものができてしまいます。この瘡蓋にはよく見るとダニの掘った小さな穴が多数みられます。

プレーリードッグの腺癌

プレーリードッグの腺癌

8才4ヶ月のオスのプレーリードッグ。
頚部に小梅大の腫瘍ができて他院にて診察してもらったが、小さい動物なので麻酔できませんと言われ、転院してきました。
高齢の個体であったので血液検査を行い、全身状態の確認後全身麻酔下で摘出手術を行いました。
左の写真はその腫瘍。右は摘出した腫瘍を細胞診のため切開したもの。
細胞診の結果悪性度の強い腺癌であった。

プレーリードッグの腹壁ヘルニア

プレーリードッグの腹壁ヘルニア

「プレーリードッグの背中に小指頭大の腫れ物がある」ということで来院されました。触診により脂肪であるらしいことはわかりましたが、腫瘍の可能性もしくは、過去に経験した「腹壁ヘルニア」の可能性もあり、手術することとなりました。
左の写真は、皮膚切開後の脂肪塊(ピンセットでつまんでいる白いところ)。一見すると単に脂肪腫と思われがち。針生検を行っても脂肪採取しかできなかったでしょう。
右の写真は脂肪塊を剥離していったところ。やはり腹壁に5mmくらいの穴が開いていて(ピンセットの先の赤い部分)、そこからお腹の中の脂肪が皮下に突出していた。